サンクスギビングディーの翌朝、私はかなり焦っていた。
持ち寄りパーティーに行くためのメシを作ったのだが、初めて作ったので普通にまずくできたのだ。
当日、持ち寄り用に作った『簡単ハムのパイ事件簿』
私は失敗しようがない簡単料理『ハムとチーズのパイ』を選んだのにもかかわらず、変なものができた。
市販の冷凍のパイ生地を使ったので失敗しようがないというのに、なんだかまずい。
でももう時間がない。『くっそーう。。レシピ通りに作ったのだ。もういいや。時間がない!!』ということで、狂気となる料理を持って一か八かで友達の家に行くことにした。
当日は『持ち寄り』でアメリカン料理が続々。
友達の家に行くとすでに、うまいものがテーブルいっぱい並んでいた。
アメリカの持ち寄りパーティーでは、『うん?』という怪しい料理がたまにある。私もその仲間に入れたらと思っていたのだが、今回に限って料理好きというメンバーが集まってしまった。。
うまいものが並ぶ中でワクワクではなく、ヒヤヒヤという経験をするのは初めだ。懺悔の気持ちと共にいろんな感情が押し寄せていく。
主役のターキーでハムパイの過去の過ちを一瞬忘れることができたが、自分の料理を並べるときは犯罪を犯しているような気持ちにもなった。
そんな中、、、『やっぱり売り切れない。。』
アメリカ人は正直だ。
どんどんなくなっていく持ち寄りのメシたち。私の料理だけはフル装備だった。
自分自身でハムパイ全部食ってしまおうか。。とも悩んだが、私だってハムパイ食いたくない。できればターキーを食いたいという欲で自分の過ちを隠す責任感さえなかった。
こっそり『持ち帰ろうとした瞬間』、、奇跡が。。
最終的には誰にも見つからないように自分の料理にフタをして持って帰ればいいんだ!!と名案が思いつき、コソ泥のようにコソコソやっていると、『あ、それ全部持っていくの?』と声をかけられた。
『あ?いる?』と恐る恐る聞いてみたところ、『え!いいの?』とまさかの返事。何も知らんかったら可哀想だと『一度コレ食べてみた?』と聞いたらうん。と言っていたので味は知っているらしい。
うっかり彼を好きになりそうだった。しかし隣にいた男は彼氏と知り、一瞬で恋心は砕け散った。
彼とはいい友達になれそうであるが、彼の味覚も私とは合わないだろうし、叶わぬ恋は最初から諦めておくのが吉である。サンクスギビングディーの奇跡として心にしまっておこうとしよう。
結論『アメリカ人の舌はどーなっとるんだ。』
私もよくバカ舌だと言われるが、アメリカ人の方がバカ舌が多いんじゃねーかと思う。
しかも、文化も違いがあるので日本人の感覚でのうまいものが全くウケずに、誰からも相手にされない料理がごく稀にたった一人でもヒットすることもあるのだ。
これからは、アメリカの持ち寄り料理で相手にされなくても全然大丈夫だなと。むしろ気合を入れて行かない方がいいなとしみじみ思った。