たぶん、まったく需要がない謎の秘境「オクラホマ・パンハンドル」情報の第3弾。ほんっっとーーに何もないオクラホマ・パンハンドルであえて観光するならここくらい、ということで名前が挙がるのがブラック・メサと呼ばれるところにある、オクラホマ州で一番標高の高い地点。その高さは4,973フィート(1,515メートル)。で、そこに行くまでの道が往復8.5マイル(約14km)のハイキングトレイルになってる。
このハイキングコースが、めっちゃキツい。でも、急な坂道が続くとか、そういう意味のキツさじゃない。実際道のりはほぼ平坦。何がキツいって、とにかく退屈。
ハイキングの醍醐味って、
とかだと思うけど、ブラック・メサには、そのどれもない。
まず緑がない。こんな感じの低い木と草むらがずーーっと続いてる。視界が開けすぎて、これから行く道のりが全部見える。全然わくわくしない。
しかも行ったのは真夏の8月。高い木がないから、強烈な直射日光をまともに浴び続けて、体力がどんどん奪われる。ハイキングコース全体が標高1,500メートルくらいの場所にあって空気が薄いせいか、バテるのも早い。
普通のハイキングだったら、鳥とかウサギとかの野生動物と不意に出会うことが道中の癒しになったりするけど、ブラック・メサには、こういうカラフルなバッタくらいしかいない。
直射日光に体力を削られ、退屈さに精神を削られる。オクラホマで「最高」の場所は、
そういうところ。
当日は、すぐ近くにある小さな民宿「Black Mesa Bed & Breakfast」に泊まった。ハイキング出発前に、宿のおばちゃんに「水はたくさん持った?」と聞かれた。軽めのハイキングコースだと思ってナメてたので、ペットボトル1本の水を見せて「これで足りますかね?」って聞いたら、「ダメよ、そんなんじゃ!」とめっちゃ怒られて、大きめの水筒に入れた水を2本も持たせてくれた。後で考えると、これが本当に助かった。むしろこれでも足りなかったくらいで、なかったら死んでたかもしれない。おばちゃんは更に、強力な日焼け止めクリームもくれた。
トレイルの入口。トイレもある。
歩き初めて5分ほどのところに「頂上まであと3.7マイル」の矢印。なんで3.7マイルなんて中途半端なところに矢印建てたんだろう。
その5分後くらいにあった矢印には、あと何マイルは書かれてなかった。残りマイルを書く計画は、2個目で早くもやる気がなくなったみたい。
歩き始めて10分ほど。延々と続く単調な景色に早くも飽きてくる。もう帰りたい。
スタート地点から1マイルの地点にベンチ。ここまで30分ほど。暑さと退屈さで早くもバテがきているので、ベンチでしっかり休む。3本持っている水のうちの1本を、もう飲み干してしまう。
あまりに退屈なので、スマホで音楽をかけながら進んでみたりする。他のハイキング客は誰もいないから、イヤホンなんてせずに、そのまま大音量で流す。
2マイルのところにもベンチ。1マイルごとにベンチあるのか。もうバテバテだったので、ベンチで10分以上休憩する。水をがぶ飲みしたかったけど、このままだと水が足りなくなると思って、このへんから水を節約して飲むようになる。
周囲に見えるのは、オニギリ型の小さな山々。ここでふと気付く。「最高地点に行くってことは、あの中のどれかを登るんだな…」。ちなみに、こういうテーブル状の台地を「メサ」って呼ぶらしい。だからブラック・メサなのね。
ここまで平坦な道のりを歩いてきたはずなのにバテバテ。更にあれを登らなきゃいけないということに心が折れそうになる。「もう帰ろうかな」と何度思ったことか。
帰るか進むか迷っているうちに、とうとう登り坂。大した坂でもないのに、空気の薄さと暑さのせいで、ちょっと進んだだけで息が切れる。低木の木陰を見つけては小まめに休憩。水も無くならないようにちびちび飲む。
だいぶ登ってきた。
ここで3マイルの椅子。上り坂が多かったせいで、2マイルから3マイルまでは、すごく長かったように感じる。
坂を登り切って台地の上に。ここからは平坦。
さすがにもう最高地点も近いかと思ったのに、こっからもまだかなり歩かされる。ここまで来たらもうさすがに引き返せない。
上に移動しても相変わらずバッタくらいしかいない退屈な道のり。直射日光はさらに激しく、目の前が朦朧としてくる。
台地の上を歩くこと30分以上、モニュメントっぽいものが見えた。ここが最高地点。予想はしてたけど、やっぱりショボい。
そういや宿のおばちゃんが、「最高地点からちょっと先に進んだところに絶景ポイントがあるわよ」と言っていたので行ってみる。
うん。まあ。なかなか。
ゴールに着いたのはいいけど、何が辛いって、この後、元来た道をそのまま戻らなきゃいけないこと。ただでさえ退屈な上に、もう知ってる道だから…
そんな帰り道にちょっとした癒しが。あれは…トカゲ!
初めて見るバッタ以外の野生動物に興奮。ちょっとの間だけ、疲れも忘れる。Texas horned lizard という種類のトカゲらしい。
その後、何度も休憩しながら2時間近くかけてスタート地点に帰ってきたら、3本の水のボトルは空になっていた。往復5時間以上かけて、人間には一人も出会わなかった。