私の住む街、オレゴン州にあるポートランドはコーヒー屋のメッカとして世界中からバリスタが集まる街としても名高い。
ポートランドでバリスタの求人を出せば、300人は応募が来るといわれる競争率で、英語も怪しい超未経験の私が選ばれてしまったのだから、人生何があるかはわからない。。

というわけで、ポートランドでバリスタデビューする。
今年は一体、何回新人デビューしただろうか?
そして今日もまた、初日デビューを迎えようとしているクソニートがここにいる。数ヶ月でこんなに転職を繰り替えす活動型クソニートも珍しいと思う。

なんか、店の前が超混んでいる。。。嫌な予感がする。
いざ、カフェの前に行くと出待ちのような人がたくさんいた。カフェってこんなに混んでることがあるのか??と衝撃を受けながら、戦闘準備はオッケーだ。心の中では『た、たのもう!!!』と重く固いドアを開けた。

店内はもっと混んでいた。。。
恐る恐る中に入ってみると、人がぎゅうぎゅうと並んでいた。
その中を新人の私は割り込みで入ってくるわけだが、『なんだ!この割り込みで入ってくる失礼なアジア人は?』という客からの目線に耐えながら、大阪のおばちゃん並みにずんずん奥に入っていく。
ようやく奥の方に行くと、くっそ忙しくしているオシャレなお兄ちゃん店員を見つけたので『すいません!!!今日からここで働くことになったBOOです!!』と叫ぶとお兄ちゃんは目を丸くしながらキッチンの方に通してくれた。

今までの人生で初出勤がこんな忙しい日に指定されたのも初めてだし、教えている暇もないくらいの忙しい土曜日に新人を投入するなんて、店員殺しのブラックじゃねーか。。。という一抹の不安が過ぎる。。。
忙しさ絶頂の中、『こっそりバリスタデビュー!!』
店の行列が外まで達したピークの中、見よう見まねで皿を片付けたり、テーブル拭いたりしていたが、『ドリンクを作れるか?』とお達しがでた。『全くの素人でござる。』と話すと適当に触ってみろ。という新人殺しの指令が出た。
店内には現役バリスタが3人もいたが、私に教えている暇なんてない。店内は戦闘モード。とりあえず見よう見まねで作ってみることにした。

ハチャメチャなラテが誕生
そして、人生初のハチャメチャなラテが誕生した。
誰にも教わってない『ハチャメチャラテ』はあまりにも見苦しかったので、誰にも見つからないようにカップに蓋をしておいた。しかし、それがいけなかったのか、、なんかの手違いで客に出てしまった。。やべぇ。。しかし、それに気づいたのは私だけだったのが幸いだ。

ドリップ係に降格!!50度近いコーヒーがこぼれる。
ハチャメチャなラテを作った後は、レジ横のドリップコーヒー係にすぐに降格となった。すでに作ってあるコーヒーをポットから出すだけの係だ。
しかし、今度はカップの蓋がちゃんと閉まってなくて、客の名前を叫んだ瞬間にパコっと外れ、手にこぼしてしまったのだ。これが激アツでカップを客の頭に投げ捨てるところだったがグッと堪えて、
心の中で『ぐわーーーーー!あじぃ!!!!!!クッッソー!!!!』と叫んだ。
見かねた店員たちが『お、お前、、大丈夫か??』と寄ってきてくれた。にいちゃん店員たちもさっき作ったばかりのコーヒーが殺人レベルだってことをわかっていたらしい。

最後は負傷した兵隊だった。疲れて家路に帰る。
バリスタ初デビューは、散々だった。
挨拶出来ないくらい忙しい戦場化したカフェで、人生初のハチャメチャコーヒーを提供し、跡が残るレベルの火傷を負ってしまった。。。
シフトの終わりには、ダチョウ倶楽部並みに体を張ったアジア人を不憫に思ったのか、『お前!今日グッジョブよ!!』と店員の兄ちゃんに声かけられたのが心の救いになったが、今となっては皮肉かもしれない。。
もう2度とお呼びがかからないのかもしれない。というネガティブに落ち込みまくって家に帰った。帰り際のバスで火傷した手がどんどん痛くなっていくのを実感するのも非常に悲しかった。

しかし意外にも2日目もお呼びがかかることになるとは、この時はまだ知るよしも知らない。そして『なぜ、こんなダメなアラフォーを採用し続けるのか?』というこのカフェの最大の謎が後から判明することになる。アラフォークソニートのバリスタ修行記は次回に続く。