アメリカ

黒人と日本人のハーフ女性が語る『見た目と心のギャップ』アメリカで生きるということ。

9月 21, 2015

二つの異なる文化に生きる

「アメリカが好きなのは自分が“自分”でいられるから」と、私の友人であり、現在23歳のアフリカンアメリカンの父と日本人の母を持つひとりの女性は言う。

彼女はアメリカ生まれの日本育ち、成人式を終えた20歳の時にアメリカにやってきた。自分の生まれた国であるアメリカにはずっと戻ってきたかったという。日本も大好きだけどやはり自分の生まれた国を知りたいと常々感じていたそうだ。

日本とアフリカのハーフの友人
日本では“ハーフ(注 1)”としての自分のキャラクターが確立しすぎて、見た目だけで足が速そうだとか、ジャンプが過ごそうだとか、スポーツでも周囲から勝手なイメージを期待されてプレッシャーだった。彼氏がなかなか出来なかったのも、“私自身”ではなく“ハーフ”の女の子としてのキャラが確立しすぎていたからだと思う。

と言う彼女は、アメリカに来て、自分が自分でいられること、皆が期待するキャラを演じようとせずにありのままの自分自身でいられることがうれしいという。

日本にいた頃も日本の黒人(注 2)コミュニティと近しく暮らしていたそうだが、「普通の」日本人ではない彼女は黒人コミュニティでよく可愛がられたそうだ。

日本とアフリカのハーフの友人
自分は日本人で日本語を話すから、やっぱり日本人よりだけど、ブラック・コミュニティでも見た目が同じだから受け入れられる。

と二つの異なる文化に属している彼女。彼女と一緒に、例えば日本食レストランに行くと、彼女だけ英語で話しかけられたりするが、そんな時私達がどれだけステレオタイプなイメージに基づいて第三者を判断しているかよくわかる。

人は見た目が9割というが、本当にそうだろうか?

彼女の場合は見た目はアフリカンアメリカン。でも日本人。日本で英語教師をしているアジア系アメリカ人を数名知っているが、やはり一番最初の授業で、彼ら・彼女らが教室に入ってくると、生徒は「えっ?」と驚きの表情を隠さないという話を聞く。

それはつまりアメリカ人の先生といえば金髪白人先生であろうという先入観が覆された驚きだ。そして人種やジェンダーのことについては人一倍敏感であるべき私(それが大学院で学んだ私の専門)も先日、人に対するバイアスを持っていた自分を責めた。

めちゃくちゃ本当に、いままで出会ったこともないような、この世のものとは思えない素直でまじめな好青年(白人二十歳前後の男性)が実はゴリゴリなヒップホップ・ラップミュージックが好きであった、という事実に驚いてしまったのだ。驚くということは、私が彼に対して勝手なイメージを膨らませていた、ということである。

私は勝手に彼に「彼はきっと白人ロック・ポップミュージックが好きなんだろうな」というラベルを張り付けていた、ということだ(ごめんね)。という具合に、私達はよく知らない他者に対してバイアスを抱きがちなので、やっぱり話をしてみないと、その人の本当のところはわからないし、勝手に見た目だけで判断されるのは、はた迷惑な(うざい)話なので、せめて心がけるだけでも、まだよく知らない人を勝手に自分でつくりあげたイメージで判断しないようにしたい。

教育を受けることの重要性。

現在アルバイトをしながらパートタイムで学校に通っている彼女は、

日本とアフリカのハーフの友人
強くかっこいい女性になりたい。今はステップアップ中で、教養・雰囲気のある人になりたい。

と語る。私の知る限り、アメリカ到着早々から本当に様々な出来事やピンチ(リアルな死活問題含)を乗り越えてきた彼女。そんな彼女がアメリカに来てからひしひしと感じることは教育を受けることの重要さ。

日本とアフリカのハーフの友人
学校に行くことがすごく大事。アメリカが簡単に外国人に労働ビザを出さないのがわかった。まずは学校に行かなければ、仕事をするのに必要な能力も英語も身につかないから。ここで日本人コミュニティにどっぷり浸かっている人と、学校に行っている人の英語能力の差はものすごい

とこれからアメリカに来たいと願う人々にはきちんと学校に行って、友達をたくさんつくって欲しいと思うとも彼女は言う。旅をしたり、日本以外の国を見ることの重要さ、洋服などのモノにお金を使うよりも旅行などの経験にお金を使うことも大切だと感じているそうだ。

瞬く間に人生が大きく変化する可能性がある国アメリカ

もうひとつ彼女がアメリカに住んで実感することに私は非常に共感した。

日本とアフリカのハーフの友人
すごいビッグにもなれるし、明日ホームレスになるかもしれない、億万長者になれるかもしれない国がアメリカ。いつ仕事が無くなるかもわからないし、ドラッグがすごく身近に溢れているから、ドラッグに慣れない人がどんどんそれにハマっていったりしたらすぐにホームレスになる可能性があると思う。

その通り。アメリカ、特にベイエリアは現在住む場所を探すのも困難であるので、何かの拍子に住むところが無くなった、今は友人のところに泊まらせてもらっている、なんて話はザラにある。そして日本では合法ではないハッパさんを路上で吸っている人もザラであり、ドラッグと隣り合わせ、という実感があることにも異論なし。

たまたま出会えた人が良い人ばかりだったから、とこれまでのアメリカ生活を振り返って語る彼女であるが、私は「たまたま出会えた人が良い人ばかりだった」というのも実力のうちだと思っている。

彼女はいろいろなことをアメリカで体験して、

日本とアフリカのハーフの友人
大変な出来事もたくさんあったけれど、すべてのことに意味があり、そういった経験がなければ仕事をすることの意味もわからずに、お金の価値もわからずに無駄遣いばかりしていたかもしれない。そして、ごはんが食べられること、仕事があること、住む場所があることに感謝してる。

そう、「当たり前」に感じるこんなことも当たり前ではない、と知っていて、それに感謝の念を抱いている人は、強い。

日本とアフリカのハーフの友人
ねぇ、運命は決まっていると思う?

と彼女に聞かれた。

yoko
イエスでもあるし、ノーでもあると思う。

色々な体験をして、後づけでその体験が今に生きているんだな、あれがなきゃ今ここにいなかったな、と思うことは誰にでもあるはずだ。その意味ではすべてのことに意味があり、運命は「決まっていた」と言えるのかもしれない。

でも運命という一本の定められた道があるのだろうか、と考えるとたくさん回り道したりして、マジ無駄だった! という時期も乗り越えて前に進んで行ったり、時には方向転換して、まったく違う方向に歩き出したりしちゃうものだろうし、運命は決まっている、と聞くと、その「ウンメー」って一本道なイメージでいやー、一本道じゃないだろうし、運命は変えられるとも言うし、いや待てよ、一度決まっていた運命が変わることも運命のうちなら、

運命は決まっていると言えるのか?!

結論、よくわからん!(笑)これからアメリカに来たいと思っている人、まだアメリカ生活が短い人へのメッセージとして「あきらめないで挑戦してほしい」と彼女からお言葉をいただいている。

あきらめないで、挑戦して、動き回って、いろんなことをしていれば、きっとそれが「ウンメー」につながっていくのだろう。(ね?)

(注 1 )ミックス(異文化・異人種・異民族の両親を持つ子)を指す言葉として今回は日本人の間で広く使われる「ハーフ」を使用。
(注 2 )アフリカン・アメリカンを指す言葉として今回は日本人の間で広く使われる黒人を使用。

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