アメリカ刑務所の実態とは。受刑者に瞑想を教える先生にインタビュー

       
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Yuko

Dec.03.2016 - 08:07 pm

一度「落ちた」人が、そこから這い上がることは可能なのだろうか?

私の元夫はヒップホップの世界を地で行くようなアフリカンアメリカンの男だった。元夫と生活を共にしている頃、人は簡単には変わることはできないのだということを嫌というほど思い知った。

そして、今ある自分というのは育ってきた環境が基盤となっているということ。その基盤が違うと面白いほどにお互いの言動を理解することができないということ。「当たり前」の基準は人それぞれ違う、そしてそれは育ってきた環境に基づいているということ。お互いを変えようとすること。躍起になることは不毛であるということを感じていた。




そんな中、今回『刑務所で瞑想を教える人がいる』と知った時、是非お会いしたいと思い、話を聞くことができました。

Koren Eloul (コレン)さん


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アリゾナ州のツーソン出身。サンフランシスコの ITのスタートアップで働いた後、刑務所で受刑者に瞑想を教える道へと転身する。日本に留学経験があり、日本語が堪能。その他、世界各国で旅した経験がある。
”そもそも収監された人々は瞑想を真剣に捉え、プログラムに参加するのか?”
”そして瞑想を通じて人間は平穏なこころを得ることができるのか?”
”人は変わることができるのだと希望を持ってもいいのだろうか?”

今回、お話をしてくれたコレンさんは、収監された男性たちのための”FIVE KEYS” というチャータースクールにて、彼らに怒りをコントロールする術(アンガーマネージメント・Anger management)を教えている。

コレンさんのミッションは、『瞑想を通じて囚人たちがこころのトラウマから開放されるよう、彼らのこころの成長を手助けをすること。

コレンさん自身、ヨガや少林寺拳法、剣道をはじめとする武術にも強く精通し、日本へ留学、日本語も完璧である。また、日本へ留学したり、長く様々な国を旅しており、28、29歳までは、自分が本当に何がやりたいのかわからなかったが、今は「これだ!」というものに出会うことができて、とてもラッキーで奇跡的なことだ。と語ってくれた。

そして、そのきっかけとなったのが、”The Dhamma Brothers”いうドキュメンタリー映画で、”This is exactly what I want to do” と言う言葉にピンときた!とのこと。



 [The Dhamma Brothers]

“Only hurt hurts people.”「他者を傷つけるのは自らが傷を負っている人間だけである」

犯罪に手を染める人々の多くが貧困やとても良いとは言えない家庭環境・教育環境の中で育つ。成長過程でこころが傷ついたり、社会に傷つけられて失望した人々が誤った道に行きやすいという。

『学校で、教室で、他者と学ぶスタイルが違うというだけの理由で、「こいつは勉強の出来ないバカだ。」という烙印を押されてしまう子どももいる。

「お前はこういう風に生まれたのだから(人種、民族、性、国籍等々含)そんな夢なんか叶う訳がないじゃないか。」

そんな風に幼少期から周囲に言われ続けていれば、それが正しい意見なのだと信じてしまっても仕方がない。そんな風に希望を持った若者に社会がトラウマを植えつけていく。自分は「ダメ」な人間なのだ、成功などできるわけないと。

そして、そのトラウマは彼らの中で生き続け、実際その通りになってしまう。というのはトラウマの一種であるが、刑務所の中で時間を過ごしている悲惨な出来事があった人、ものすごい怒りを抱えている人、罪悪感に苦しむ人が多くいる。そんな人々の苦しみを瞑想を通じて少しでも和らげたいんだ。』

とコレンさんは語る。

コレンさん自身も瞑想を通じて、たとえ他人からきつい言葉で何かを言われても、その人が本当に「言いたい」ことは何のかを理解しようと努めるようになった、他者からの強い言葉にも感情で反応しなくなったという。

それは投獄されずに「普通」に生きている私たちにも求められるスキルなのではないだろうか。他人の感情にいちいち振り回されていては身が持たない。

例えば、恋人に話しかけたらイライラした態度で「後にしてくれ」と冷たく突き放された。それに対して「はぁ?(怒) 意味わかんないし」とこちらも気分を害したことを隠そうともせず反応してしまえば、お互いに気分が悪くなる。恋人が「後にしてくれ」と言ったことには理由があるのかもしれない。そこに何か「本当に言いたいこと」があるのかもしれない。そんな風に誰もが想像力を働かせて、どんな状況でも乱されないこころを育てることは、自分にとっても周囲にとっても非常に大事なことなのではないだろうか。

コレンさんが言うように、他者や社会から「傷つけられたと思っている」人だけが他者や社会を傷つけるのであれば、自分のこころは誰からも傷つけられることはないのだという信念、他者の感情に反応しないこころを育てることは、世界平和と言ったら言い過ぎかもしれないが、そんなようなものに近づくための第一歩になるのかもしれない。

少なくとも自分の関わる人々と自分自身の間での平穏は守られるし、もしかしたら自分も周囲の人々も今よりも少し満たされたような幸せな気持ちで生きていくことに繋がるかもしれない。

私達は大なり小なり、これまで生きてきた中で生まれた「トラウマ」を何かしら抱えているものだと思うが、

”Trauma follows. Without addressing, trauma perpetuates.”「トラウマを抱えていることを認識しなければ、それは存在し続けるんだ」

とコレンさんは言う。トラウマというものは、まず、自分の傷ついたこころを癒すことができなければ、私達自身が周囲の他者に傷を負わせる加害者になってしまう可能性がある。ヨガや瞑想の重要性は世間でも注目されているが、自分も人も傷つけないために、今よりも幸せになるために、まだ見ぬ自分と出会うためにもヨガや瞑想の実践はとてもよいアイディアなのかもしれない。

自分のこころの傷を認め、自分は変わるのだと決め、それを実践すること。それが出来れば人は誰でも良い方向に変わることができるのではないだろうか。一度「落ちた」人でも。




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Special Thank you!!! Koren & Grace

       

Yuko

カリフォルニア州立大学心理学士号、セクシャリティ・スタディ修士号取得、フリーライター・エディター・トランスレーター。セクシャリティ、人種、エスニック・スタディ、恋愛、結婚、女(ジェンダー)、セックスを学問しつつ語ります。2015年に長年付き合っていたアフリカン・アメリカンの男と結婚。